6月12日(火)〜17日(日)に、本郷孝文染織展が開催されました。
天蚕の糸と織物
緑色の繭が天蚕(山繭)
総天蚕のきもの
残念ながら天蚕の織物の美しさは写真では再現できません。。
草木染めの作品
織柄のアップ
本郷孝文「染織展」によせて いしいしんじ
天蚕のこと
天 蚕とは「天然の蚕(かいこ)」「野生の蚕」のこと。わたしたちが知っている、白い「おかいこさん」の繭(まゆ)は、「家蚕」といって、糸を効 率よくとるた めに品種改良された、いってみれば「家畜」です。天蚕は、画廊内に置かれた実物をご覧いただければわかるとおり、白でなく、エメラルドグリー ンに色づいて います。その繭をそだてる作業、糸をつむぐ手間、織っていく工程、すべて、「家蚕」を使うのとは別次元の手間、時間、困難がともないます。そ のプロセスを 経てこの世にうまれでた天蚕の糸は、「糸のダイヤ」と呼ばれ、またその糸で織られた布は、「繊維の女王」と呼ばれてきました。現在、海外はも ちろん日本国 内でも、総天蚕の織物を織るひとはほとんどいません。
総天蚕の織物
天 蚕の繭のみどり色は、糸を精練していくにつれ後退し、かわりに白金(プラチナ)色の、夢の底のような輝きをはなちはじめます。「糸のダイヤ」 といわれる由 縁です。その華やかさのため、通常は、上記の家蚕の織物のなかに少し混ぜて織り、アクセントをつける、というのがおもな使われ方でした。そん な「糸のダイ ヤ」を、経緯(たてよこ)すべてに使い、織りあげたのが総天蚕の織物です。本郷孝文氏とつきあいの長い、京都在住の染織家・吉岡幸雄さんは、 「驚異的。聞 いたこともない」と語っています。